指導者、プロスケーター、そして二児の母である林渚さんは現在、『浅田真央サンクスツアー』のキャストとしても活躍しています。幼いころから一緒に滑り、浅田真央さんから“ナギちゃん”と親しまれる仲。そんな林さんに『サンクスツアー』に参加した経緯と将来の展望について話を伺いました。


 

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サンクスツアーに出演するようになった経緯を教えて下さい。

「ずっと本格的なアイスショーに出るのが夢だったんです。でも、子供を産んだことによって、ちょっとあきらめていた部分がありました。そんなとき、浅田真央ちゃんが国内で新しいアイスショーを作り、ショーに出演する人を募集するという情報が入ったんです。国内でそんなショーがあるなら、ぜひ、参加したいと思って、迷いなく真っ先に申し込みました」

 オーディションがあったのですね。

「はい。応募してみたら、実は私が一番だったみたいです。初回の新潟公演の打ち上げで“ナギちゃんが(申し込み)一番だったよ”って真央ちゃんと真央ちゃんのマネージャーさんが教えてくれました。それがすっごくうれしかったです。真央ちゃんの振り付けを覚えて、真央ちゃんの前でそれを踊るということをしました」

 
オーディションなら人数は結構いたのでは。

「書類選考に何人いたかはわかりませんが、そこにも結構いたかな。今、思い返したら“あんな人もいたな”って」

 オーディションが行われたのはいつぐらいですか?

「サンクスツアーは2018年5月からスタートしたんですが、その前に練習期間があったので、オーディションは2017年11月か12月ぐらいだったかな? いざ、オーディション受かったのはいいんですが、受かってから大丈夫かなって不安になってきました。最初は、みんなに迷惑かけたらどうしようって思ったんですけど、今は受かってよかったと思っています」

 夢がかなったわけですから。

「サンクスツアーは真央ちゃんのコンセプトがすごく素敵で。お客さんに感謝を伝えに全国をまわりたいっていうことなので。そういうショーに出られたことは夢かなったと同時に、浅田真央ちゃんと一緒に滑ることができるというのがすごく自分としてはうれしいんです。真央ちゃんの思いを伝えるショーに参加できることが、自分の夢を叶えたことよりもさらにうれしいです」

 リハーサルはどうされているんですか?

「最初の5月の前は5ヶ月リハーサルしたんです。最初は何も決まっていない状態から真央ちゃんが振り付けて、みんなでいろんな案を出し合ってショーを作り上げていく感じで。それがまた楽しかったです。自分の仕事にもつながったというか、とても良い経験でした。もともとあるものを振付の方から教えてもらうのではなく、みんなで何もない状態から作っていくので。それも貴重な経験でした」

 曲もみんなで選んだんですか?

「曲は決まっていました。曲は真央ちゃんと舞ちゃんで決めていたのかな。それはオーディションの前からこういう構成で、こういう曲でってのは、決まっていました。でも振付がまっさらだったんです。真央ちゃんが部分的にこれを入れたいというのを出して、この間と間はどうしようみたいなことを、みんなで意見を出し合いました。私も意見出しましたね。ところどころ、私が意見出したところがあって、“ここそうだ!”って思いながら滑るのも楽しいです」
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※林さんが参加する『浅田真央サンクスツアー』の様子。(写真提供/林渚さん)
  サンクスツアーの合間、真央さんとキャストの皆さんでその土地のスポットに行かれていますよね。足湯につかったり、その土地の郷土料理を堪能したりされているようですが。

「足湯ありましたね(笑い)。パワースポットとかいろんなところに連れていってもらいました」それは真央さんが決めるんですか?色々です。真央ちゃんがその土地、その土地でお気に入りのお店があったりして、そこへ行くこともありますし。今回はここのお蕎麦屋さんに行くとか、事前にスケジュールに組まれてることもあります」

 サンクスツアーの間、お子さんはどうされているんですか?

「うちの母親に預かってもらいます。あと神奈川公演は帯同させてもらいました。みんなかわいがってくれています(笑)」

 娘さんたちも浅田真央さんと身近に触れられて、喜ばれているのでは。

「それはあります。“この曲からこの曲で真央ちゃんが何色の衣装から何色の衣装に着替えているんだよ。天井はこんな状態になっているんだよ”って家で私に話しているんです」

 それはお子さんもショーを見ていて?

「そうです。見ていて、ここはあーでこうでって。スタッフさんに隣で“あれがスパイラルっていうんだよ”って知っている人に教えたりしています」

またかわいいですね。

「ははは(笑い)」

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岩手公演でキャストの仲間たちと。(写真提供/林渚さん)

 コーチとして、いろんな生徒さんを見ていらっしゃるわけですが、時代の流れで以前と変わって来ていることはありますか?

「私の時代はベーシックに締めて飛んでいればよかったんですが、今は手を挙げて飛んだりしますよね。締めることと手を挙げたジャンプ両方教えるようにと、道家先生からは言われます。あとはジャンプに入るときも複雑な入り方からとか。イーグルからとかカウンターからとか。羽生(結弦)くんがやっているようなカウンターからアクセルに入るとか。あとはスパイラルから飛ぶとか。私の頃よりもより複雑なことをやらせなきゃいけないので、時間がないって感じです。ベーシックなものを作るのに時間がかかるのに、そこからさらに肉付けしていかなきゃいけない。それが大変だなと思います。点数が明確化されたのはいいけれど、細かいところでとっていかないといけないのが選手も負担が大きいし、コーチもやることがありすぎるなって思います。コーチになってからコーチ大変だなって思うようになりました」

 いずれはコーチとして海外に生徒たちを連れて行くことも視野にいれていますか?

「いきたいですね。私、元カナダ代表のエマニュエル・サンデュさんのところに高校生の頃、2回サマーキャンプに行ったんです。エマニュエルのコーチであるジョアン・マクラウド先生に習いに行っていました。元カナダ代表のケヴィン・レイノルズさんもジョアン先生の門下生だったので、彼もいました。中国の選手も参加していたので、私も刺激になったんです。そこにいつか生徒を連れていきたいなと思っています」
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 どの質問にも明るく朗らかに、時には笑いを交えて答えて下さった林さん。インタビューしているこちらまでが明るい気持ちになっていきます。生徒たちからは“渚先生”と慕われ、指導する姿はやさしさであふれていました。<了>

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プロフィール
林渚 NAGISA HAYASHI

1988年7月19日生まれ

東京都出身

9才でスケートをはじめ、ノービス、ジュニア、シニアと全日本に連続で出場する。


2004年日本スケート連盟ジュニア強化選手。2001年全日本ノービス選手権大会9位、2003年東日本ジュニア選手権大会3位、2005年東日本選手権優勝、2006年インターハイ個人、団体ともに3位ほか。


現在は東大和を拠点に活動する『道家フィギュアスケートチーム』インストラクター、振付師として活動。一方で赤坂サカス屋外スケートリンク「ホワイトサカス」で行なわれているアイスショーやイベントに多数出演。2018年からは、「浅田真央サンクスツアー」にキャストとして参加している。


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撮影・文 廉屋友美